幸福度研究への手応え

多方面からの問合せと取材

本年8月、弊所の会長寺島実郎監修、日本総合研究所編、日本ユニシス総合技術研究所システム分析協力『全47都道府県幸福度ランキング(2016年版)』が東洋経済新報社より刊行されました。この本は、『日本でいちばんいい県―都道府県幸福度ランキング(2012年版)』、『全47都道府県幸福度ランキング(2014年版)』に続く3冊目の出版になります。

8月の出版後、弊所主催記者発表会、寺島の報道ライブ番組(BS11:寺島実郎の未来先見塾)、出版元の東洋経済新報社の東洋経済オンライン等による情報発信によって、これまで2冊の出版時以上に、地方自治体、経済界、新聞・テレビ等のメディアを含む各方面から多くの問合せと取材の申し込みが寄せられています。

こうした問合せ、取材における主な内容は、今回のランキング結果の特徴、指標設定の考え方、どうして福井県が2回連続でランキング1位になっているのか、上位5位に北陸3県(1位:福井県、3位:富山県、5位:石川県)がすべて入っている理由は何か、今回新たに追加した指標についての説明、都道府県の他、政令指定都市、中核市の幸福度ランキングを発表した経緯、そしてこれらの様々な幸福度研究の知見・結果をどのように地域や社会の活性化、創生に活かしていくといいのか等です。

それぞれへの回答について、問合せや取材される関係者にできるだけ丁寧に応対するとともに、これまでの3冊の出版のねらいや指標(ランキング結果等)の見方、使い方の説明の機会や意見交換等を通じて、各方面で幸福度研究に対する関心や理解が少しずつ高まってきているとの手応えを感じているところです。

次代を担うJCI関係者との意見交換

多方面からの取材等がある中で、先週公益社団法人日本青年会議所(JCI)の幹部メンバーとの意見交換を行いました。JCIは、明るい豊かな社会の実現を目指して、全国で約35,000人の青年経済人(入会資格は40歳まで)が全国各地で少しでも日本を良くしたいと思い活動をしている団体です。この団体が、2017年度の取組として、「未来投資指数(JC版QOL)」の作成を行う準備を始めたそうであり、弊所の幸福度ランキングの書籍を読んで、多くのヒントがあるのではないかとのことで来訪され、弊所の研究スタッフも交えて意見交換を行ったものです。

1冊目を出版してから、多くの方々と意見交換を行って来ましたが、JCIのような全国組織をもち、今後の我が国の経済、社会を多方面でリードすると期待される世代との意見交換はこれまで以上にとても新鮮で楽しいものでありました。

来年度の取組を成功に導くために、本業(企業経営)に割く時間を多少犠牲にしつつも新しい未来投資指数の設計、作成、確立を行いたいとの説明は、とても重要な試みと感じたところです。まだ手探りの段階のようですが、以下のような問題意識を持って進められるようです。

  • 背景:長く続くデフレの影響から明るい未来を描きにくい状況が続いています。お金のような目に見えるモノだけでなく家族や社会との絆、労働の喜びのような目に見えない幸せを顕在化させる必要があります。
  • 目的:目先のお金にとらわれることなく、明るい未来に向けて前向きに生活していけるような指標を作成し、発信することで目に見えないモノを大切にする価値観を確立します。

このような背景、目的のもとに現状で指標の作成が検討され、そのための地道な調査も今後進めるとのことです。そして、目指していくこととして、内閣府等への政策提言をとりまとめるとの考えから、企業にとって目先の利益を重視する指標ではなく、目に見えない資本を蓄積している企業を重視できる新たな指標の導入等を提言したいとのことです。併せて、個人の生活がどのように豊かになっていくのか、所得の増減ではなく、目に見えない未来への投資を重視した指標の導入を提言するとの目標です。

私からは、主に本書の特徴の1つである「現行指標」、「先行指標」設定の考え方、また国連や国際機関等における世界の幸福度調査においてデンマークが毎回ランキングの1位に選定される背景や理由について説明・情報共有等を行いました。

結び

弊所では、国を変えるためには、まず地方が活性化し、元気を取り戻すことが重要との観点で幸福度研究を行い、研究成果の作品化(出版)を継続しています。このため、本書の主なターゲット(ユーザー)として、地方行政に係る関係者が地域や社会のニーズにあったビジョンや行政サービス等の検討・策定を行う上で、活用してもらうことを想定してきましたが、今般のJCIの関係者との意見交換を通じて、新たなそしてとても有力なユーザーが発見できたことは、今後の弊所の幸福度研究の進化の面でも重要な示唆が得られたと考えています。

従って、JCIにおける未来投資指数作成への取組について、弊所としてもできるだけ協力・連携ができるようにしていきたいと思っています。