新年を迎えて―創業50年

2020年の年頭にあたって

新年明けましておめでとうございます。皆様にとって幸せな1年になりますよう祈念いたしますとともに、今年も本コーナーをご厚誼いただきたくよろしくお願い申し上げます。

弊所は、今年の8月31日に創業50年を迎えます。当時の財界・学界・官界リーダーによる純民間的発意によって公共政策志向のシンクタンクとして、日本社会の変貌の過程で生ずる経済社会上及び産業経営上の諸問題の解決に関し、諸学の総合的見地から調査研究及び教育普及等を行い、国民経済に寄与することを目的にスタートしました。

そして、中立性と創造性の重視、革新的で柔軟な研究組織の確立、国際的な活動の積極的展開の3つを基本信条に、経済、産業、人口・環境・エネルギー、医療看護・福祉介護、社会インフラ、IT、農業・食料、観光などの各分野でこれまでに1,200件を超える調査研究や教育事業の実績を蓄積してきています。今日では、公共政策志向の数少ない総合シンクタンクとして国内外から期待も寄せられています。この記念すべき50年の節目の年頭にあたり、弊所のさらなる飛躍に向けて所感の一端を述べたいと思います。

好奇心と業態転換が必要

創業期と異なり、現下の日本社会は、異次元の高齢化、人口減少、経済成長の鈍化、動かぬ実体経済(経済格差)などから閉塞感に覆われています。これをいかに好転させるかが、弊所(公共政策志向のシンクタンク)にとっても大きな挑戦であり眼目と考えています。

例えば、創業期の頃日本の人口は1億人を超え、2010年の1.28億人をピークに数十年後(2055年)には1億人を切ることが予想されています。さらに、1億人を超えた時の高齢者は約700万人(高齢化率7%)、それが35年後には約3,800万人(高齢化率38%)まで増えることになります。人口(社会)構造の大きな動態変化は様々な問題をはらみ、経済社会、産業経営、さらに地域経営上からも諸学の総合的見地から取り組むことが必要です。

人間と、人間が創りだす社会に好奇心を持つ、これがシンクタンクの原点です。これは何、これは何故、これはどうやってという具合に、好奇心が情報を集め、蓄積し、分析して新しい情報や知見を積極的に発信していく。一人ひとりが思索し行動しながら、その集合体としてのシンクタンクという組織(ワンチーム)が新しい力を発揮すると考えています。

これまでの半世紀のうち、おおまかに前期(25年)は自主安定財源等に基づく能動的な調査研究が中心でしたが、後期(25年)は、官公庁などの委託事業にウエイトがおかれ、受動的な調査研究が中心であったと認識しています。社会構造が今後大きく動態変化し複雑化することが想定される中で、弊所の事業経営も特長を活かし時代を見据えた能動的な業態へとより計画的に転換することが最重要と考えています。とりわけサスティナブルな組織運営の観点からも、特に若い世代にとってモチベーションやチャレンジ精神が高揚できる組織とする点からも、時代の要請に適った主体的なプロジェクトの組成が求められます。

これまで弊所及び弊所グループの先輩所員や関係者が築いてきた資産(価値)を十分に発揮・進化できるよう、所員一同が好奇心と業態転換に真正面から取り組み、弊所のサスティナブルな飛躍に貢献することが必要と考えています。

本年9月10日、2018年からスタートした弊所の基幹プロジェクトの1つであるジェロントロジーの体系的研究でパートナーを組む山野学苑の山野ホール(代々木)をお借りし、ここで述べた今後の飛躍に向けた計画的な業態転換のあらましをプロモーション企画事業として広く発信・共有する予定です。企画事業は所内に設置したタスクフォースメンバーのもとで現在検討中ですが、以下にそのポイントを紹介します。

飛躍に向けたプロモーション企画事業

企画事業は弊所の特長(比較優位)も踏まえ、主に3つの構成を予定しています。

1つ目は、「構想力」をアピールする企画内容です。それは、今後半世紀を見据えた長期基本戦略(構想)の作成、そのうち業態転換を計画的に行い公共政策志向のシンクタンクとしてサスティナブルな飛躍を可能とする「10年プラン」と「実行計画(ロードマップ)」を提示し、弊所の企業・組織アドバイザー力を発信することがねらいです。

2つ目は、「統合力」をアピールする企画内容です。それは、ジェロントロジー研究協議会での研究成果(コンテンツづくりに資するパイロット事業とプラットフォームの実証)が、今秋から実行フェーズに移り、クラスター(美容ジェロ(美容福祉士)、金融ジェロ(市民後見アドバイザー)、観光ジェロ(地域観光案内士)など)の社会実装(含む資格認定機構)が見える化し、弊所の束ね役(機能)に企業や団体、個人に参画するメリットを発信・共有することがねらいです

3つ目は、「プロジェクト力」をアピールする企画内容です。それは、東日本大震災を契機に2012年から隔年で発刊している県民幸福度研究の成果である「全47都道府県幸福度ランキング」(東洋経済新報社刊)について、今夏に5冊目として2020年版を発刊する予定です。新刊では、地域住民が幸福度を実感できる効果(個人と地域の健康・活性化)を具体のプロジェクトを通じた見える化によって、県民や自治体、地元企業に真の幸福度研究への理解とともに、投資や参加を促し、全国での地方創生につながるモデル事業として発信することがねらいです

これら3つの構成内容は密接に連関し、弊所が公共政策志向のシンクタンクとして、今後飛躍する上で重要なステップと位置づけており、ご案内(ご招待)する各方面の皆様からポジティブな評価をいただくことが必要と考えています。

結び

本企画事業は、東京主体の調査研究本部の業態転換を意識した構成ですが、弊所は名古屋オフィスを母体とした教育事業本部とのシナジーも今後より重要と考えています。教育事業本部は、主に医療看護・福祉介護分野の研修セミナーのほか、社会福祉士の養成のための教育プログラムを通じて、累計7,223人の資格取得者を育ててきています。これは、一般養成施設における合格者数として、15年連続で日本一という実績です。教育事業本部とのシナジーを促進するためにも、来年には都内に分散する調査研究本部関係オフィスを財団本部とともに一カ所に統合し、効果的な事業経営と組織運営に資するよう、スリム化を図ることも必要と考えています。

これまでに多くの皆様に調査研究や教育事業の面でご支援・ご協力をいただきましたことに改めて感謝しますとともに、本年以降も一層のお引き立てを賜りますようお願い申し上げる次第です。