県民幸福度研究のさらなる進化に向けて

福井県との勉強会、静岡県議会での講演、第4弾の出版準備会合

9月1日、福井県庁での幸福度向上に向けた勉強会に弊所の研究員とともに出席しました。当日は、担当部局のふるさと県民局幹部をはじめ庁内部局横断的に関係者30名弱が出席し、中身の濃い勉強会(意見交換)が行われました。

また、9月20日には静岡県議会議員研修会において、「県民幸福度研究 ~幸福度ランキングの政策・施策への活用~」と題して講演を行いました。本年1月の静岡県地方議会議長連絡協議会政策研修会に続く、2度目の講演であり、1月にご出席頂いた当時の県議会議長の意向もあり、今般県議会全議員を対象に講演を行うことになった次第です。


弊所では、リーマン・ショック以降のわが国の再生を研究する中で、国の再生は地方の再生から、をモットーに「県民幸福度研究」を基幹テーマと位置づけ研究蓄積を進めており、その成果は東洋経済新報社から、1年おきに「幸福度ランキング」として出版してきています。これまでに2012年、14年、16年版が刊行されており、来年第4弾として2018年版を出版する予定です。その1回目の準備会合が9月中旬に開催され、出版社幹部及び編集者を含む関係者で多様な角度から意見交換・出版方針確認を行いました。

以下に、弊所の県民幸福度研究のさらなる進化に向けてそれぞれ要点を紹介します。

「幸福度日本一」ふくいの姿

福井県は、弊所の「全47都道府県幸福度ランキング」で2回(2014年、16年版)続けて第1位となっており、その結果を深く考察することが、今後の研究蓄積の面でも重要なステップと考えています。こうした中、先月福井県庁で多くの関係職員と意見交換等を行う機会が得られたことは、私をはじめ作品づくりに関わる研究員にとっても貴重な場であったと思っています。これまでも出版ごとに地方自治体関係者から意見交換等を求められてきましたが、県庁を訪問し部局横断的に関係職員と話し合う機会は今回が最初であり、今後こうした機会が増えることを期待しています。

当日は、私から「より高みにある幸福度を目指して ~『ランキングトップ』を走り続けるために~」と題してプレゼン(問題提起)を行い、続いて担当課長より「福井県の主な取り組み」として『「幸福度日本一」ふくいの姿』が紹介され、その後意見交換が行われました。

『「幸福度日本一」ふくいの姿』と題する資料は、なぜ福井県は幸福度が高いか、幸福度日本一の発信、の大きく2部構成で、前者は幸福度ランキングに見る福井の姿として、基本指標、分野別指標の代表的な指標(順位)をもとに、具体的な改善に向けた取り組みが整理・分析され、弊所のランキング結果が県行政の政策・施策にどのように活用されているかの一端(好事例)を知る思いでありました。さらに、幸福度の高さを支える福井の基盤について、「①雇用環境」、「②女性活躍」、「③教育力」、「④子育て環境」の主に4つの視点から関連データ等を収集するとともに、施策等の分析・整理が紹介されており、福井県の強み(魅力)を考察する上で、多くの示唆が得られたように思っています。以下の「雇用環境」及び「女性活躍」のスライドをご参照ください。

後者の発信についても、様々なメディアをピックアップし、積極的なPRを行っており、加えて県民のふるさとへの誇りを醸成する取り組みが並行して行われていることに「幸福度日本一」を活かす重要な戦略性が組み込まれているように感じた次第です。

意見交換のポイント

私のプレゼンでは、福井県が全国総合1位の中でも特に文化分野が42位と相対的に低いことから、この分野の改善が必要ではないか、などの問題提起を行いました。これに対して県側からは、主に以下のような指摘等がありました。

例えば、文化分野の「書籍購入額」が36位と順位が低いが、福井県は図書館での1人あたり図書貸出数が全国トップである。書店がない地域もあるが、図書館は必ずあり、読みたい本はまず図書館にあるかどうか調べることが多い。また、小中学校においても本を配って読んでもらう取り組みを行っている。

生活分野の「一般廃棄物リサイクル率」や「エネルギー消費量」の順位が低いが、これらが幸せにつながるのかという疑問はある。また、福井県は持ち家住宅の床面積が広いため、「持ち家比率」が高いと「エネルギー消費量」は多くなるといった傾向にあるなど、指標に裏腹な部分が見られる。

私としては、リサイクルや省エネはこれからのライフスタイルや人生観としても幸せにつながるものとの基本認識を持っています。この他、県側からは他の指標や幸福度の計測手法に関わる指摘などもあり、こうした建設的な意見交換の場は弊所の幸福度研究の進化の面でも貴重なプロセスと考えています。

静岡県での2度目の講演

本年1月27日、静岡県地方議会議長連絡協議会政策研修会に招かれ、主に2016年版の書籍をもとに「幸福度ランキングの見方・考え方」と題して講演を行いました。県内各市町村の議長・副議長が集まっておられ、客観的データによるランキング結果、これに基づく他県との比較などに関心を持たれ、今後の県の施策の反映にあたって有意義な指標づくりを進めていきたいとの感想を頂きました。

そして今回(9月20日)、静岡県議会議員研修会において2度目の講演を行いました。対象者は静岡県議会議員(69名)及び静岡県幹部職員(若干名)に対して、幸福度ランキングの結果をできるだけ政策や施策に活用する観点から、特に経年変化等の分析が政策・施策チェック(政策の総合化等)に資すること、さらに客観的データ等による分析結果を議会及び行政がそれぞれの立場でどのように有効に使うことが、県民の幸福度向上の面からも有用であるか、などについてお話しました。

これに対して、出席議員から健康分野の「ホームヘルパー数」が47位と低い順位になっていることに関連して、今後の在宅介護の捉え方と併せて移動手段等を含む複合的な対策の必要性が指摘されました。加えて、在宅介護に十分対応できる地域包括ケアの確立や全世代が参加できるスポーツの機会の充実など、先行指標(分野)に軸足を置いた積極的な取り組みが必要であるとの認識も示されました。

静岡県政策企画部では、平成28年度「幸福度に関する指標試案の作成」委託業務も実施しており、こうした業務成果なども踏まえ、来年4月からスタートする次期総合計画の検討・策定が今年度内に進められる予定との説明もありました。

第4弾の出版準備会合

先月中旬、監修者及び出版社幹部・編集者を含め、弊所の研究員も加わり、第4弾(2018年版)の発刊に向けた最初の準備会合を行いました。3冊目までとの違いをどのように評価・整理し、4冊目の作品を完成させるか、が最重要な検討テーマです。出版を重ねるごとに地方自治体関係者をはじめ全国各地・各方面から多くの取材・問合せ等が増えており、こうした実情を踏まえつつ、踏襲すべき訴求思想(メッセージ)に加え、積み上げてきた知見や昨今の社会経済状況等を考慮した新たな訴求思想(メーセージ)を適切に組み込むことが必要との認識です。

特に、重要と考えられる輪郭と政策課題等として、①異次元の高齢化、②世代間(特に子育て世代)で優先すべき取組、③地域・地方も主導する産業力、④生活のディテール、⑤広域ブロックでの括り、⑥モデル事例分析、などが主要軸であり、いずれも県民・市民の能動的な参画を促す幸福度測定がベースになるとの認識です。

また、第4弾の刊行にあたっては、内容はもとより編集・装丁を含め斬新で使いやすい作品とし、広報・周知、販促についても多角的なアプローチを採ることが確認されました。今後、発刊に向けて関係者で的確なスケジュール工程で進めることにしています。弊所の幸福度研究のさらなる進化に向けて、関係者一同研鑽を積む考えでいます。どうぞご期待ください。