医療・防災産業創生協議会の設立と活動

コロナ禍における弊所の取組み―業態転換を目指して

弊所では、会長寺島実郎のイニシアチブのもと、コロナ禍において公共政策志向のシンクタンクとして、今なすべきことを考え、またシンクタンクの業態転換も見据え、昨年4月、日本医師会総合政策研究機構、(一社)ふくしま総合災害対応訓練機構の協力を得て、わが国の医療産業に係る緊急ファクト調査(フェーズⅠ)を実施し、「産業力で医療崩壊を防止する緊急提言―第2波、ポスト・コロナを見据えて」を取りまとめ、公表しました。

その後、コロナ第2波、3波やポスト・コロナを見据えた国家的かつ包括的対策は十分とは言えず、本提言で強調した「民間主体の対策を主導するタスクフォース(プラットフォーム)が必要である」という問題意識のもと、残る「民間のアクション提言」の具体化に向けて、昨秋から本年2月にかけ日本医師会や一部企業の協力による「医商連携」に資するプラットフォームの組成プロジェクト(フェーズⅡ)を進めてきたところです。

具体的には、「安全JAPAN」プロジェクト(埼玉モデル)として、埼玉県内の2つの医療機関(さいたま岩槻病院(さいたま市)、並木病院(所沢市))に「発熱検査センター」の機能を有する1ユニット(検体採取・分析、患者待機の2台のコンテナ)をそれぞれ設置し、昨年12月より運用を開始しました。本検査センターは、当面本年末まで運用を行う予定ですが、実際に院外でのコンテナを使った検査体制について医療従事者(病院長等)から、安全な動線確保をはじめ医療提供サービス面で多様な選択肢が増えた、との好意的なご意見等も頂いています。また、本プロジェクト(埼玉モデル)で使用するコンテナの開発・製造費の調達では、市民一人ひとりが参画・協力する「新しい公共」の仕組みづくりを模索する観点からクラウドファンディング手法を採り、215名の方々から支援金(5,466千円)をお寄せ頂きました。改めて支援者に感謝申し上げる次第です。

医療・防災産業創生協議会の設立(フェーズⅢ)

上記取組みをポスト・コロナも見据えさらに進化・発展させるため、今般(本年2月)、弊所内に「医療・防災産業創生協議会」(会長:寺島実郎)を立ち上げ、4月13日に都内で協議会の設立説明会を兼ねたスタートアップミーティングを開催したところです。日本医師会、日本歯科医師会、土木学会関係者等とともに、多彩なパートナー企業(約15社)が一堂に会し、医療・防災産業創生に向けて熱心な意見交換等が交わされました。本協議会を創設した趣旨については、会長の日経掲載紙をご参照頂ければと存じます。

日経掲載紙「安心・安全・幸福をもたらす産業創生について」(2021.2.25)

当日は、会長(寺島)から現下のコロナ禍も踏まえ、わが国として大きなパラダイム転換が求められるとの問題意識から、

  • 戦後の経済発展を支えた通商国家モデルの限界
  • ワクチンの国産化も進まない現状
  • 国民の豊かさを追求するアプローチ(産業構造)から、国民の安全・安心を追求するアプローチ(産業構造)への転換

などへの対応が急務であり、本協議会では、医療体制や防災力の強化、国際競争力(輸出促進)をキーワードに、個々の企業の枠を超えた結束力が必要との発言(挨拶)がありました。加えて、本協議会では、データリズムの時代認識から、医療・防災に係るデータ潜在力の体系化(洗い出し)と深堀、埼玉モデルの延長としてのプロジェクト・エンジニアリング(実装化)がポイントであり、単なる調査研究や勉強組織ではない、プロジェクト・ベースの協議会組織であることを強調しました。


協議会開催の様子(写真左から寺島(会長)、横倉先生(特別顧問・日本医師会前会長)、柳川先生(特別顧問・日本歯科医師会副会長))

医療・防災産業創生協議会の活動

本協議会の活動内容については、事務局より説明を行いましたが、主に①医療・防災産業創生に向けた必要不可欠な調査研究(関連法体系・制度の整理、制度設計・構築、市場醸成、提言発表など)、②社会実装に向けた具体のプロジェクト実施とデータベースの構築、を推進するとの内容です。

そして、現段階での1つのシンボリックな社会実装プロジェクトとして、高機能コンテナ(コンテンツなど)の開発と全国「防災道の駅」への設置・運用(オペレーション及びシステム・データ管理など)が紹介されました。すでに埼玉モデルで運用中の高機能コンテナのスキームを全国に展開する観点から、国土交通省における「道の駅」の防災拠点構想(「防災道の駅」の認定制度、今夏までに選定予定)の動向も見据えつつ、本制度との積極的な連携を推進することを計画しています。

道の駅は平時の地域での購買、賑わいの場として一定の役割を果たしているところですが、道の駅が有する特性(駐車場、電源、水回り、情報機材など)から、有事の災害対応などへの備えとして地域の安全・安心・幸福にも寄与することは市民、行政、企業などにも広く理解され、地域における必要不可欠な活動拠点(仕組み)として支援・協力の輪が拡大し、地域力の強化や関連する新しい産業創生にも資するものと期待しています。

続いて、事務局が用意したディスカッションペーパーが説明され、医療・防災産業創生に資する調査研究の観点から、6月末をメドに医療・防災産業の「定義」と「範囲」、想定される災害シナリオなど、制度(備蓄含む)・定義(業種分類)・技術基盤(規格など)・市場規模(海外含む)に係るタスクチームを編成し体系・基礎調査を行い、その成果を「医療・防災産業創生に資する提言(仮称)」として取りまとめ、公表する予定です。

本協議会は、今後3年間の期限付きで活動を展開し、「医療・防災産業推進協議会(仮称)」への発展的な移行に繋げる目論見です。

結び

当日出席者からは、医療と防災の両面の定義付けを整理してから産業創生を議論する進め方、感染症、地震、洪水など想定災害シナリオの設定に基づく対応(用途品・仕様・備蓄)、平時・有事(災害発生時)に資する対策、全体の総合戦略とシステム運用・監理などに対して概ね賛同する意見などが表明されました。
さらに、

  • 今般のコロナ禍や頻発する災害現場での経験(救護・救援・避難所体制など)を、今度こそ有事におけるわが国に相応しい制度・仕組みを整備し、次世代にも安心・安全な社会システム環境を引き継ぐことに繋げる教訓
  • 200年余にいたる富士山噴火の発生可能性への備え(特に、インフラの寸断による東西の人流・物流への影響をはじめ電気・通信やエネルギーの遮断による生活や経済活動等への甚大な被害など)
  • サステイナビリティや地方創生への貢献での民間企業の閉塞感、社会課題解決をビジネスに組み込めない私企業のカベ、新しい価値の創造など

本協議会の設立を契機に、医療と防災、官と民、中央と地方の関係をはじめ国全体の考え方を先入観なく根本的に変えるべきタイミングであり、そうした観点から、新しい産業創生が起こることがとても重要ではないか、との見解も示されました。

本協議会開催のあと、4月16日には予てから意見交換等を行ってきました与野党の国会議員有志の方々との勉強会が開催され、今国会中(6月)に超党派による医療・防災産業創生を支援頂ける議連の設立が予定されることになりました。

民間主導とは言え、国の制度や仕組み等を変えることも想定され、国会の有志の方々のサポートは不可欠であり、産政官学の連携体制も十分に留意しつつ当面3年間の協議会活動を精力的に推進することが重要との認識です。多くの皆様に本協議会活動へのご支援等を賜りたくお願い申し上げる次第です。