旅先で「感じる・考える」こと-その2

◆ベトナム人の幸福とは

前回のスタッフブログの続きです。

結局、ドライバーの青年との会話では、ベトナム語講座と日本語講座に時間を要し、「休日に何をして過ごすか」を聞くまでで時間切れとなりました。「映画を観に行くことと、ドライブをすることが好き」と話していました。

青年は齢30歳で、私の方が年上だと話すと「Oh!Sister!」などと冗談交じりで話す、屈託のなさが印象的でした(日本人がどこかに置いてきてしまったような、無邪気さが残っています)。

旅の3日目は現地ツアーに参加、そのときのベトナム人の添乗員は、ベトナムの生活や文化、歴史を丁寧に教えてくれました。彼曰く、ベトナムでは【安心・安定、子ども、経済】3つが揃えば幸せだということでした。

3つの要素について詳しい解説はなかったので、私なりに以下のように解釈しました。

  • 「安心・安定」:不安や心配がなく心安らかに暮らせること(精神的安定性)
  • 「子ども」:家庭を持ち子どもがいること(将来性)
  • 「経済」:金銭(家計)のやりくりがうまくいくこと(経済的安定性)

「安心・安定」と「経済」は関連が深いようで、その明確な差異を正しく理解できているかは定かではありません。日本国内の幸福学研究では「自己実現と成長」「つながりと感謝」「独立とマイペース」「前向きと楽観」の4つの因子で幸せを感じる要因が構成される、ともいわれています。ベトナムにおいては、「自己実現と成長」といった目標達成志向性や、「つながりと感謝」「独立とマイペース」といった他者との関係性における要素は薄く、個人にとってミニマムな要素(自分の家族や日々の暮らし)の土台の安定性を重視しているようにうかがえました。

*参考:『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門』(前野隆司著、2013年、講談社)

 

<ホイアンのナイトマーケットにて―道端でベトナム将棋(コォー・トゥオン)をしたり、楽器を弾いたり、ゆったりとした時間が流れる>

◆急速な変化の只中にある国

歴史的な街並みを残す長閑な町ホイアンの隣には、リゾート開発が急速に進められネオンが煌びやかな都市ダナンがあります。バイク事故が多いけれども、車を買うお金がない大多数の中間層はバイクに乗る。けれども、携帯電話やスマートフォンは購入するし、インターネット環境も整っています。

<急速に開発が進むダナンの夜景>

<バイク2人乗りは当たり前。最大4人乗り(大人2人・子ども2人)を見かけました>

2014年の統計では、ベトナムの人口は約9,073万人、高齢化率(65歳以上の人口割合)は約6.7%。厚生労働省の「2017年海外情勢報告」によると、ベトナムは人口抑制と貧困解消のために、政府がゆるやかな出生抑制政策をとっており、合計特殊出生率が2008年2.1から2013年1.7に減少しています。ピラミッド型の人口構造が崩れ、高齢化が進むことが見込まれており、2020年には高齢化率が8.0%、2040年には17.1%になると予測され、かつての日本を上回るスピードで高齢化が進行することが推計されています。
国家経済が十分成長しないうちに高齢化を迎え、非常に短い準備期間で対応しなければいけないという、先進国が経験しなかった大きな問題に直面することが指摘されているのです。

* 出典:「2017年 海外情勢報告」(厚生労働省、2018年3月)

 

昭和の日本を見ているようなノスタルジーを感じる瞬間もあれば、現代日本と変わらない技術が共存している―2018年のベトナム一人旅は、「次来る時はどうなっているだろう」という想いとともに終えました。

◆旅を終えて

若者たちの屈託のない笑顔、無邪気さ、そして、商店で働く女性や子育てをする女性たちの力強さが印象的でした。戦争で男性たちが戦場に赴き、銃後の社会の運営は女性に依存せざるを得なかった背景があり、「カカア天下の国」とも言われています。一方で、道端で野菜や果物を売る老婆たちは、皺を刻み込んだ顔に少しも笑みを見せない。その姿もまた魅力的でした。

介護人材不足問題等とも切り離せず、現在も日本と関係の深いベトナム。次回はまた新たな視点を持って訪ねようと思います。

~最後まで読んでいただき、どうもありがとうございました。~

<ホイアン市場では、女性たちが威勢よく野菜・果物を売る>